恭平の物語(Story of Kyohei)


目次


恭平家族と私

小心者~?

 弟は朝、ジュディーと一緒に出勤し、夜は家で面倒をみていた。仕事場では、少ない従業員だったがその従業員にも可愛がられ、まるでお姫様のように可愛がられていた。愛嬌もよく、いたずらも少なく、無駄にほえる事も無い。全く手間のかからず大人しい。恭平の時とはえらい違いだ。恭平だったら、何でも口にし、何でもおもちゃにし、何にでも興味を示す。目が離せないという印象で、とても仕事中に一人で置いておくなんて事はできなかっただろう。しかしジュディーのいい子ぶりには驚くものがあった。

 皆が仕事をしているときはおとなしく寝ていて、誰かが事務所に入ってくるとムクっと起きて尻尾を振る。誰もが一度はジュディーの前で足を止め「ヨシヨシ」と頭をなぜる。こうして多くの人に可愛がられるのはとてもいいことだ。恭平が子供の頃には家族は「恭平と一緒にいると何も出来ない」と相手にしないようにしていた。すると相手の欲しい恭平は私の後ろをついてきて、結局私がず~っと恭平の相手をさせられる、という感じだった。しかし、ジュディーには、皆が「今はね、忙しいんだよ。後から遊んであげるからね」と声をかけている。まさかあのごつい人が・・・・と思う人ほど、ジュディーに対して話す時の声は優しいのも不思議だ。

 本当に手間のかからないジュディーは、なにやら覚えもよさそうだ。そこで、お手を教えてみた。まさか?直ぐに覚えた。お座りだってなんのその。恭平は、教えている最中から横を向いたり、隙を見て走り去ったり、と芸を覚えるなんてこの子には無理、とあきらめる程だったが、こんなに違いがあるのだろうか?これは女の子だからか????

 ただ気になる事が一つ。ご飯をたいらげる速度が異様に速い。タイムは一回の食事に対し、30秒。足りないかもしれないという獣医師のアドバイスに従い、量を増やすと、お腹はパンパンを通り越して、破裂しそうなほど食べる。いくらなんでも食べすぎだ。この事は今でも唯一問題となっていて「何でも食べる」変わり者の犬として我が家では扱われている。恭平と後に生まれるさくらは、好き嫌いが激しく、匂いを嗅いでから食べるが、ジュディーだけはにおいも嗅がず、何でも口にする。ま、何でも食べる変わり者ではなく、好き嫌いの無い良い子としておこう。

 弟との生活も割りと平和にやっているようだ。ある日、出かけるからとゲージに入れて出かけたらしい。帰ってくると黒い影がドアの向こうに見える。ドアを開けた奥のほうにゲージが置いてあるのでまさか?と思うとジュディーがゲージの外にいたらしい。が、ゲージのドアは閉まっている。倒れているわけでもない。一体どうやって?議論が始まったが、まさかジュディーが垂直のゲージをよじ登るということも考えにくい。謎は謎を呼び、自分でドアを開けて、出てからドアを閉めた、というありえない意見まで出てきた。

 そんなある日、謎は解けた。ゲージに足をかけて順番に上っていき、一番上から飛び降りたのを弟が見たというのだ。垂直の面はもちろん使わない。角の90度という角度を使い、右と左の柵の目に足をかけて一歩一歩上に上る。そして、高さだけでも80センチはある反対側へはジャンプで飛び降りる。。まさかこの大人しいジュディーがこんな大技を使うとは!!!!全く誰も想像していなかった。大人しいと侮っていると、こうして裏切られることもある。  あっという間に、ジュディーは生後3ヶ月になり、ワクチンを打つことになった。2度ワクチンを打てば自宅で恭平や私たちと一緒に暮らすことになる。果たして恭平は仲良くしてくれるだろうか?

初対面

 初めての対面は、ジュディーを我が家に連れてきて短時間だけ恭平と逢わせることにした。そして、ドキドキの瞬間。  恭平は、弟が連れてきたその子犬を見て気に入らない様子。臭いをかいだりはするが、尻尾も振らないし、ジュディーが近づくと怒る。そして、直ぐに興味がなさそうな様子を見せる。明らかにジュディーを無視している。

 この日は直ぐに弟とジュディーは家に帰った。しかし、恭平は機嫌が悪そうだ。どうやら突然やってきたシンディーのことがあるのか、自分の家に新しい家族が入り込むことを拒否しているように見える。

 短い時間で、数回会わせて、恭平が納得が行くように様子を見て行くことにした。

 そして2回目の対面。やはり恭平は面白くない様子。が、今度は自分のおもちゃを持ってきてジュディーにみせびらかす。しかしあげる訳ではない。見せびらかし、ジュディーが近づくと走り去る。大人しいジュディーは追いかけるものの、恭平に触る事も出来ない。これは恭平にとっては割りと納得のいく事であったようで、「僕の家、僕の家族、僕のおもちゃ、全ては僕のもの」というテリトリーを侵す事は無かった。慣れたら案外いいコンビになるかもしれない。

 恭平は受け入れないので、もうしばらくジュディーは毎日弟と出勤して日中を仕事場で過ごしていた。しかし、あることに気がついた。事務所に柵を作ってジュディーのスペースを作っていたけれど、その柵を乗り越えて事務所内をうろうろするようになった。そこまではありきたりの出来事だが、事務所の外に出るドアに近づくけれど、そのドアの向こうへは絶対に行かない。これがもし恭平なら、ドアが開いた隙に外に出て、走り回るとか、遊び道具を探すなどの行動をするはずだ。しかし、ジュディーはドアの向こうへ行っては行けないと知っているのだろうか? だとしたら、この子はかなり賢い。恭平なんて屁でもない。

 しかし、人間の思い込みほどおろかな物はない。仕事が早く終わった土曜日の午後。。。。ジュディーを事務所の外へ出してみた。少し遊ばせようとしたのだ。所が、一歩も歩かない。お尻を丸めてちょっと震っているようにも見える。どうしたのだろうか? 一体何が悪いのか? 目の前には特にジュディーが恐れるものは置いていない。原因がわからない。場所を変えてみた。同じだ。何が悪い? まさか・・・・・・怖いのか

 そう。ジュディーは臆病だった。それも信じられないほどの臆病だ。

 臆病者のジュディーはそれでも大人しいという利点がある。あまり激しい動きはしないし、想像できる範囲のいたずらしかしない。扱いやすいと言ってもいだろう。

家族になるには

 ジュディーを自宅で生活させることにした。父も私も自宅に入るので取り合えず慣れるまでには時間はかからなかった。しかし、問題は恭平だ。何度会ってもどうもジュディーのことが気に入らない。恭平はずっとジュディーを拒否し続けるのかもしれない、という不安もあったが生活をしながら慣れていくしかない。そのためジュディーを自宅で生活させることにした。ただ、ジュディーにとっては私も父も会社では一緒なので慣れている。生活する場所が変わるという事が一番心配だが、それ以上に心配なのは恭平だった。

 そして、一緒に暮らすようになって、心配は的中。恭平はジュディーがご飯をもらうと、何やら横目で見ている。おやつをもらうときには自分がもらった後に、ジュディーがもらうかどうかも確認する。おもちゃだってジュディーが少しでもくわえようとするなら、走ってきておもちゃを取り上げて走り去る。意地悪だ。

 

 父も母も結局は小さいジュディーをかばう。それが気に入らないようで、今度はおもちゃをくわえてわざとジュディーのところへ持っていく。が、あげるわけではない。ジュディーがクゥンクゥンと言っても決してジュディーにはあげない。おまけに私を横目で見ながらその行動を取る。

 私は2匹の間に入ったとしても絶対にジュディーをかばわなかった。ジュディーが恭平におもちゃを取り上げられても叱らなかったし、それを一々確認するような行動をしていた。父と母はまだ子供のジュディーをかばうが、その時も私をちらっと見る。きっと、私が父と母と同じ態度を取ったら恭平は非行に走るに違いない。

 しかし、ちょっとだけ後悔した。自分の勝手でジュディーを家族にしたが恭平は望んでいなかったんだろうなぁ。だとしたら私のしたことは恭平にとってはイヤな事だったんだろうなぁ。そう考えてしまう。そういえば一日たりとも私とは別の部屋で寝たことがない恭平が、シンディーの面倒を見ている間、一人で私の部屋で寝ていた。昼間でも決して私に何かを要求するわけでもなかったし、じっと私がシンディーを抱っこしたり面倒を見たりする姿をただ眺めていた。

 あの時の恭平の姿は忘れられない。きっと恭平は私がジュディーだけに愛情が行くことを望んでいないし、この家の中のものは全て自分の物だという意識があると思う。それを簡単に打ち崩すことはやはり恭平のためには良くない。私が出来ることは恭平が一番、という姿勢を絶対に崩さない事であり、恭平がジュディーを認めるまで時間をかけていくことだろう、と思った。

 その後も恭平はジュディーを受け入れない状態が続いた。夜は、私と恭平は2階で寝るが、ジュディーはまだ2階へ上がる事は出来ないので、寝るときは下の階で母と寝ていた。朝方階段の上を見て「クゥン、クゥン」と鳴く。恭平を呼んでいるのだ。恭平は階段の上から見ていて「フン、2階は僕とねえちゃん(私)の場所だよ」と言っているよう。本当に意地悪だ。

 昼間は相変わらず恭平は自分のおもちゃを抱え込み、ジュディーの目の前にもって行き見せびらかす。ジュディーが「私も遊びたいよ」と恭平にお願いをするが恭平は絶対に渡さない。ジュディーはお腹を見せてみたり、他のものをくわえて見せたりするが、恭平は意地悪を止めない。

 ん~・・・・やはり恭平にはジュディーを受け入れることは出来ないのかもしれない。恭平には悪いことをしたのだろうか? ジュディーも1匹だけで可愛がってもらえる人の所へ行った方が良かったのだろうか? と反省と後悔がよぎり始めた。。

 そんなある日。静かな2匹に気がついて振り返ってみると、恭平の横にジュディーが・・・・なんと一緒に寝ていた。今までは「お昼寝だって近づかないでよ」と言わんばかりに離れて寝ていた。ジュディーが近づこうとすると恭平は高いところへ登りジュディーを拒否していた。なのに、今一緒に寝ている。並んだ2匹が見れるなんて嬉しい。本当に嬉しい。

 お昼寝から目覚めたとき、恭平を抱きしめた。「恭平、やっとジュディーちゃんを家族と認めてくれたのね」と思い切りほめて抱っこした。すると、ジュディーが走ってきて、私と恭平の間に割り込んだ。すると恭平はウガァと言ってジュディーに思い切り怒った・・・・駄目だこれじゃ。涙だ・・・・

 
ピーちゃん

 そういえば、ジュディーが来る前にあった出来事を思い出した。

 仕事場にツバメが巣を作り、毎年子育てをしに来るツバメがいた。ある年、そのツバメの巣から1匹の子供が落ちてきて、皆で育てたことがある。夜は父が家に連れて帰ってきたのだが、始めてツバメの子供を自宅に連れてきたとき、恭平は興味津々で、そのツバメの子供から目を離さない。何もしないからいいだろうと思っていたそのとき、大きな口をあいてご飯を要求するツバメを噛み付いた。あ、このツバメは名前をピーちゃんという。で、そのピーちゃんは丸ごと頭からガブリとやられてしまったものだから、どうやら失神したようでピクリともしない。「なんて事をするんだ!!!!」と父に思い切り叱られていじけた。でも、恭平は懲りない性格で叱られても叱られてもツバメが口を空けるたびに噛み付こうとする。あまりに危険なため高いところにおいて世話をしていた。それでも、「ピーピー」とピーちゃんが言うと慌ててピーちゃんのところへ行き、「何だ?何なんだ?どうしてここにいる?君は何者なんだ?」とでも言いたげに離れない。

 この先ピーちゃんが旅立つまで恭平の敵になった。ピーちゃんも恭平の姿を見ると身を隠して生活をしていた。結局最期まで仲良くなることはなかった。

 やはり恭平は自分の家は自分のものという意識がかなり強いと思う。ジュディーとはやっと一緒に寝るまでの関係になったが、この先も恭平一番の姿勢を崩すべきではないだろう。もし、恭平が2番ということになったらどんないじけ方をするか判ったものではない。結構頑固な性格なのを私はよく知っているし、いやらしくしつこいということも知っている。恭平、あなたは何があっても一番だよ!!!!!!

 そろそろ始めて外のお散歩に挑戦するときが来た。私は楽しみで仕方がない。恭平はもう何も言わなくても自分で色々判断が出来るため、ジュディーが恭平についてきちんといい子で散歩が出来るようにトレーニングもしないといけない。まずは、外に出ることからだ。

 私は恭平というやんちゃな犬には慣れているが、このように臆病な子に対してどのように接していいのか判らない。第一、同じ犬種でこんなにも性格が違うとは思ってもいなかった。まさか自転車見ただけで逃げるなんて・・・・冗談でしょ? 

 大人しいことにも利点はある。やんちゃは少ないし、手間がかからない。それに恭平とじゃれて遊ぶときも、ちょっと恭平が怒るとすぐにお腹を見せて降参する。これが恭平と同じような性格だったら恭平はきっといじけるのを通り越して、家出すらするかもしれない。

 2匹を見ていると、恭平が先になんでもして、その恭平をジュディーが真似をしている。しつけも全くといっていいほどしなくていい。全て恭平の真似をするからだ。それに恭平がお手をしてほめてもらえると、いかにも「ほらね、僕ってすごいんだぞ。君にはまだ何も出来ないだろ?」とでも言いたげに得意な表情を見せる。その表情が又可愛いのだが・・・・ただ、今まで恭平君が恋をした相手を見てみると大人しすぎるジュディーはタイプでなない。どちらかというと活発な子が好きで、一緒に走り回って遊べる相手がタイプだ。その代わり、自分はボスだという意識を持ち始めてきたように思う。

 仕事場の近くの公園に2匹を連れて行ったときの事。ビクビクしながら歩くのでペースがかなり遅い。走り回ることが好きな恭平との距離が大分離れてしまった。その時、恭平は後ろを振り返りジュディーを確認した。様子を見ているとジュディーが追いつくまでその場で待っていた。直ぐそこまでジュディーがたどり着いた時、ジュディーも恭平もお互いに尻尾を振り嬉しそうにしている。今までからは想像も出来ないことだ。あの意地悪ばかりだった恭平が私よりもジュディーをかばう存在になるなんて!!!!!

初めての出産

 ジュディーは何時までも子供のまま、あっという間に赤ちゃんを作る時期になった。心配は多いけれどとにかく挑戦することに。このときジュディーは1歳半。獣医さんと相談をしたが子供を作る時期などもO・K。ジュディーの体系が妊娠に大丈夫かもO・K。そして、待望の妊娠。

 このときジュディーは1歳半。そして無事妊娠。しかし、ジュディーは何時までも子供のようで、赤ちゃんが赤ちゃんを出産するのではという程子供っぽい。それに体も小柄。心配だったけれど、獣医さんは「大丈夫、きちんと出産できますよ」と言ってくれた。そして何匹赤ちゃんがお腹にいるかをエコーで検査。3匹だ!!!!!!すごい!!!!ワクワク、ドキドキ、とにかく楽しみで仕方ない。 そして、出産のとき。

 おろおろするのは私と母で、どうしていいか判らない。ジュディーも私に「一緒にいて」といわんばかりに私について回る。獣医さんが電話で対応してくれて、「お腹が痛くなってどうしていいかわからないし、不安だからです。一緒にいてあげてください。そしてそのほかは何もしなくていいです。自分で全てできるものです」とフォロー。その通り、お産箱にジュディーを入れて母と私でお産箱を囲うようにして見守っていると、1匹目の赤ちゃんを出産。女の子だ!!!!!!想像以上に小さく、真っ黒で、でもしっかり動いていて、ミーミー鳴いている。元気な赤ちゃんだ。そしてあるか無いかわからないほどの短い手足でズリズリ、ジュディーのおっぱいにたどり着き、おっぱいを飲み始める。素晴らしい生命力だ。感動した。15分後、男の子出産。2時間後、再び男の子を出産。どの子も皆、元気でミーミーいいながらおっぱいを吸い始め、ジュディーは母親の顔になっている。よく頑張ったねと誉めた。ジュディーは一生懸命自分の赤ちゃんをなめ、おっぱいを吸う子供達をとても温かいまなざしで包んでいる。

 さっきまで不安で私について回った時とは全然違い、安心と満足を感じているようだ。幸せそうな表情と言ってもいいだろう。きちんと出産できるか、育てられるか、などという不安は全く無くなり、ジュディーの母親としての態度に私は感動するしかない。恭平は?今までに見たことも無いような驚いた表情でお産箱を覗いている。それも、私や母の隙間から覗き見ていて、赤ちゃんがミーミーと言うと首をかしげてみせる。不思議で仕方ないのだろう。しかし、段々慣れてきて、赤ちゃんの匂いをかごうとしたその時!!!!ジュディーに噛み付かれた。犬の社会ではオスは育児に関わる事はできないらしい。この後も覗き見はできるが赤ちゃんの近くによることは許されなかった。かわいそうな恭平。今まではジュディーの上に立ち、威張っていたが、出産後はジュディーには勝てない。完全に尻に敷かれた。あるときジュディーがトイレに行ったその隙、恭平はお産箱に入り、赤ちゃんの匂いをやっとかぐことが出来た。そこにジュディーがトイレから帰って来た。やばい。もちろん、恭平は恐ろしい勢いでジュディーに叱られ、あえなく退散。が、それに終わらずすごい勢いで吠え付かれ、私に助けを求めに来た。完全に立場は逆転だ。

 そして1週間ほど、子育てに集中する期間らしい。トイレ以外はお産箱から出ないし、私たちと目が合うだけでウゥッと怒る。唯一怒らないときは自分のご飯を運んでもらうときだけ。ジュディーは「ご飯」という言葉を知ってるので、「ジュディーちゃん、ご飯だよ」と声をかけてお産箱に近づかないと叱られる。赤ちゃんの体重を測定したいが、目が合うだけで怒られていては出来るはずも無い。今では一家で一番えらいのはジュディーだ。お願い、ジュディー様、赤ちゃんを触らせて!!!!!  触らせてもらえないので、私はジュディーのお産箱の横で寝ることにした。ちょっとした隙があると赤ちゃんを触らせてもらえるし、第一離れるのがもったいない。出来るだけジュディーの赤ちゃんとジュディーの子育て振りを見ていたい。

 赤ちゃんの目が見えるようになったらしい。小さな目をパチパチさせて、兄弟同士でじゃれあったりするようになった。まだ立ち上がるまでにはなっていないがはいはいをしながら子犬同士で遊ぶ姿は本当にたまらない。

 そしてこの頃は、ジュディーの機嫌がいいと、赤ちゃんを触らせもらえる。最高に幸せだ。手のひらサイズだったのが、両手を必要とするほど成長している。ジュディーのご飯は、動物病院で購入したペースト状のもので、産後の母親犬にも、離乳食にも使えるものをあげていた。少し高いのだが、授乳の間は母親はものすごい栄養が必要で、かなりの量を食べる。

 

 ある日、ジュディーにご飯を運んであげてその場を離れたすると1匹の赤ちゃんがそのご飯の中に顔を突っ込んでいて、動かない。完全に鼻と口はえさの中。ペースト状なので埋まっているという感じだ。私は「えさの中で溺れてる」と思った。ご飯の中で窒息死。これではしゃれにならない。とっさに抱き上げてみると、動いている。あ、良かった。溺死は免れた。しかし冷静になって見るとムニャムニャ口を動かしている。お産箱に返してあげると、又、ご飯の方へズリズリ這っていく。つまりご飯を食べていたのだ。そしてこの子は後にさくらと命名される。

 どの子もすくすく成長し、私は愛情がどんどん移り、時間の許す限り赤ちゃんと過ごした。歩き始めるとどんどん可愛くなる。離乳食をあげるとえさの中に手足を突っ込んだり、顔中離乳食だらけになったり、結構大変なのだがこの世話がまた楽しい。しかし、そろそろ里親探しをしなくては。。。。

 動物病院でも心当たりを探してくれるといってくれて、その言葉どおり、一人の女性が欲しいと言ってくれた。獣医さんもペット・ショップから購入するより、病気の心配はないし、健康状態もいいので自信をもって紹介してくれた。しかし、どうしても1匹は手放したくない。私の希望は、恭平の子供が子供を作り、その子供がまた子供を作り、ずっと続けて行きたいと言うことだった。しかし母は「3匹なんて」と言うのが口癖であきらめかけたその時、弟が飼ってもいいと言い出した。よし。2匹目の里親はこれで決まり。あとは最期の1匹だ。

 しかしなかなか見つからず、ペット・ショップにもって行くと母は言い出した。なんとか家から家という形でこの子の里親を探したい。シンディーのように、病気をもらったりしないためにも、そうしたかった。どうしたらいいのか?なんて考えながら恭平を父の仕事場の近くの公園に連れて行った時のこと。数人の女性が恭平を見つけて「可愛い」と集まってきた。その中の女性がちょうど犬を飼う事を考えていると言った。事情を説明すると、直ぐに我が家に見に来てくれて、翌日この女性の家族が里親となった。タイミングというのはこんなものだろうか?